それでは、今後、管理栄養士が人生100年時代に向けてできることをお話したいと思います。
人生100年時代と言われ、いつまでも健康で活躍でき安心していつまでも暮らせる社会が必要とされています。管理栄養士や栄養士は、食と健康の分野におけるエキスパートとして、健康で長生きできる環境作りに貢献していくことが使命だと思います。
そして、さまざまな技術革新により、管理栄養士として私たちが日ごろ行っている業務も、ますますAI化が進むことでしょう。
そこで、今後、管理栄養士や栄養士が機械化やAI化が進む食と健康の分野で活躍していくために、今の課題と今後も必要とされるために、今できることをお話していきたいと思います。
今後の管理栄養士は、+αでオリジナルをウリにする時代
人生100年時代、定年も延長
内閣府の調査によると、60歳を過ぎても「働きたい」と考えている人が、全体の8割以上を占め、65歳を過ぎても「働きたい」と考えている人が半数以上を占めています。また、総務省お労働力調査によると、60歳以上の雇用者数は過去10年間で1.5倍に増加しており、ますます働く高齢者が増加していくことが予想されます。
今までの経験やスキルが豊富だからこそ、ますます高齢者の活躍の場所が広がりそうですね。
健康意識の高まりで、管理栄養士や栄養士の活躍に期待
人生100年と考えると、健康意識がますます高まり、食と健康の分野の専門家である管理栄養士や栄養士の今後の活躍も期待されそうです。
また、コロナウイルスの感染拡大がいまだに収束に向けての糸口が見つからないため、一人一人がコロナウイルスの感染を防ぐため、免疫力の強化や健康意識の高まりがみられます。
食に関する資格が豊富
食に関する資格は、管理栄養士や栄養士以外にもたくさんの民間資格があります。例えば、このような資格があります。
- 調理師
- パティシエ
- 食生活アドバイザー
- 薬膳コーディーネーター
- 野菜ソムリエ
- 食育インストラクター
- フードコーディネーター
- フードスペシャリスト
- ビューティーフードアドバイザー
- マクロビオティック
- スポーツフードアドバイザー
- スポーツ栄養スペシャリスト
- 発酵食スペシャリスト
これら、まだ一部ですが食に関する資格は、管理栄養士・栄養士以外にもたくさんあります。
資格を複数持った、オンリーワンの管理栄養士
管理栄養士や栄養士は、食と健康の専門家ですが、それぞれ得意分野があります。長年、病院に勤めていると治療食や治療中の患者さんに対する栄養指導に詳しかったり、保育園に努めていると、離乳食や幼児食に詳しく食育に興味を持って取り組んでいる管理栄養士や栄養士もいます。
自分の専門分野と食に関する民間資格を追加で取得することで、さらにオンリーワンの管理栄養士として活動できます。
管理栄養士や栄養士に追加して取得する資格は、得意分野や興味のある分野をもっと掘り下げて学びが深められるものがいいでしょう。そして、資格取得を通して学びび続けることで、今後の管理栄養士や栄養士に必要なスキルの1つになっていくことでしょう。
管理栄養士は、機械化できない仕事
さまざまな分野のAIによる力が発揮
「AIによって仕事が奪われる」と言うSF映画のような話は、私たちの身近なところで起きています。AIの発展によって、医療や企業の単純作業を人間の代わりに行っています。例えば、医療においては、検査画像をAIが診断することで、診断時間を8割削減するものもあるそうです。
さらに、人間の脳では記憶しきれない量のデータを持っているため、さらに病気について学習をし、新たな病気を画像から発見することもできます。
管理栄養士の仕事は、今後、機械化されるのか?
私たち、食と健康の分野において、AIを活用した事例だと、食事を撮影した画像から、一食で摂取できるカロリーや栄養素を瞬時に判断し、栄養計算するソフトもあります。AIで、健康管理してくれるアプリの開発も進んでいます。
今後、AIの発展が進むことで、私たち、管理栄養士や栄養士の仕事はどうなっていくのでしょうか?
オックスフォード大学のベネディクト博士らの研究によると、「機会化によって仕事は失われるのか?」と題し、さまざまな職種について、コンピューターに取って代わられる確率を計算した結果が発表されています。
AIによって業務の効率化が進み、生産性が向上する結果、定期的な業務の機械化が進む職業について少なくなる一方で、AIを導入するためのシステムの開発やシステムを運用するなどの職種は、新たに増加するとみられます。
例えば、患者様のカルテなどのデータ処理やルーチン業務など、コンピューターが進めた方が正確でスピーディーにできる仕事は、AI化がますます進むでしょう。
また、この研究結果で発表された702 職種の中で、生き残れるランキングの11位に、管理栄養士が入っています。「だから、安心」と、安堵はできませんが、管理栄養士の仕事は人を対象にする仕事で、AI化が難しい仕事と言えるでしょう。
AIにできない、管理栄養士の仕事とは?
AIが行った方が正確でスピーディーな業務があるのに対し、管理栄養士がしている仕事は、患者様や食事で困っている「人」を対象に、仕事をしています。また他職種との連携も必要であり、機械化が難しい分野です。
人と人との対話で成り立っている私たちの仕事ですから、コミニケーション能力を磨き、対象者に寄り添った提案が求められるでしょう。
今後、管理栄養士ができることとは?
管理栄養士の活躍の場所
管理栄養士の活躍の場所は、病院や福祉施設、教育機関等を始め、地域活動や美容、スポーツの分野など幅広く活躍しています。今後も、食と健康の分野で管理栄養士が必要とされる職業の1つになることでしょう。
政府が、人生100年時代をスローガンに、様々な有識者会議を行っています。その中間報告によると、高齢者から若者まで、すべての国民に活躍の場があり、すべての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会を作ることが重要な課題と報告されています。
つまり、私たち管理栄養士は、人生100年時代、全ての人が元気に活躍するために食事でサポートしていくことが求められているのではないでしょうか?
コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、健康意識が二極化
コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、免疫力を高める食事や健康作りを意識して栄養バランスの見直しをする人も増えました。一方で、コロナ禍で先行きに不安を感じ、メンタルの不調を訴える人も増えています。
これは、産経新聞社と独立行政法人地域医療機能推進機構大阪病院が、健康意識の高い中高年を中心に、「コロナ禍において、どのような健康不安を抱えているか」調査結果にも現れています。
そして、以前と比べ不安を感じるようになった人たちは、不安を感じても特に何もせずそのままになっている人が半数だったそうです。病院に行くと、「かえってコロナに感染するのではないか」と言う不安や「どこに相談していいかわからない」と言うことも考えられます。
健康のことを相談できないときは、インターネットで調べたり本を探して自分で解決しようとする人が多いようです。インターネットでは、間違った情報も流れていることもあり、その人に合った方法が見つかるとは限りません。
メンタルヘルスにも食の力を!管理栄養士の今後の活躍の可能性
食事の力は、メンタルヘルスにおいても重要な役割を果たします。食べたもので私たちの体を作られている、それは、体だけではなく心もです。何をどう食べるか、メンタルヘルスにおいても、不安に感じる人と対話をしながら、その人に合った食事法を提案していくことが、今後、管理栄養士ができることだと感じています。
例えば、幸せを感じるホルモンと言われるセロトニンは、腸内で90%が生成されます。セロトニンを生成するために必要な、栄養素として、トリプトファンを食事でとることが重要になります。そこで、管理栄養士の出番です。トリプトファンを多く含む食品を使った料理の提案、メンタルヘルスに不安を感じる人に向けた食事の提供などもできます。
これは、管理栄養士に+αで、カウンセリング技術を身に付け、一人ひとりに合った食と健康の提案をしていくことです。また、美味しい料理を提供するために料理の技術を磨く、より料理を美味しく見せるためのスタイリング力、それを撮影してSNSで発信するとなると、写真の技術やSNSでの発信など、管理栄養士に+αで身に着けておくと、オンリーワンな管理栄養士としてますます活躍の可能性が広がります。
まとめ
管理栄養士としての活躍は、AIでどんなに技術が進んでも人を対象にしているため、必要な職業であり続けるでしょう。そして、コロナウイルスの感染拡大や社会情勢によって、健康意識も二極化しています。
ますます、健康意識を高めたいという人、病気になるのでは?と不安を抱え誰にも相談できずに苦しむ人もいます。人生100年時代で、今後、すべての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会を作ることが重要な課題です。
管理栄養士として、食と健康の分野で活躍するためには、管理栄養士に+αのスキルを身に着け、一人一人にあわせた食と健康を提案していくことではないでしょうか。
管理栄養士 岡田明子
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